なぜかと言えば、S社は事業として「美」を扱っており、理念にも美の追求を謳って65いる。
美意識というのは化粧のみならず、所作、振る舞い、外観とさまざまありますが、一番深いのは生き方そのものです。
そうした観点から言えば、立ち居振る舞いや態度も美しくあってほしいからです。
余談ですが、採用の担当者が大学の企業説明会に行くときには、その大学のスクールカラーをネクタイとチーフにコーディネートしていくこともあります。
招いていただいたことへの感謝の表現です。
複数の企業が参加する合同説明会ではS社が大事にしているカラー、紫をつけていきます。
ある男子学生さんは、最終面接に紫のネクタイをつけてきた。
それはそれでこちらもうれしいものです。
最後の一分で逆転最終面接で学生さんが失敗するのは、想定質問を想定通りに答えすぎてしまっているときでしょう。
立板に水のごとく溶々と語るのだけれど、こちらには何も入ってこない。
これはマイナスです。
ただ、こんなケースもありました。
最初の質問で蹟いてしまい、最後までうまく自分のリズムがつかめなかった女性。
質問に対して、答えがぶつ切りになってしまい、うまく会66S社話が流れない。
本人も途中でダメだと感じはじめ、その焦りもこちらに伝わってくる。
もうダメかなとこちらも思い始めた。
そこで、最後に他社の選考はどうですかと話を振ってみた。
そうしたら、その瞬間、「いえ、私はS社さんに入りたいんです!」と勢いのある言葉が飛び出した。
演技ではなく、突発的な心の叫びでした。
それまでの二〇分はうまく行かなかったけれど、最後の一分で捨て身で本心をぶつけてきた。
これは非常に伝わりました。
実際に内定も出て、いま三年目として働いています。
だから、私は説明会で言っているんです。
最後の最後まで諦めないでくださいと。
最後の一分で状況が変わることはあるんです。
採用後、新入社員は集合研修を受けたあと、各地の販売拠点に配属となる。
以前は本社人事部がその販売拠点内のどの事業所のどの部門に配属するかまで決めていたが、近年では人事部と配属先の事業所責任者が共同で綿密な育成計画を立て、事業所内で個別に二ヵ月間の研修を経たあと、本人の能力や適性を見極めたうえで本配属が決まる仕組みになっている。
S社では商品開発やマーケティングなどの部門に注目が集まるが、多くの社員のファーストキャリアは営業部門だ。
その現実を理解せずに入社し、営業に回されると、理想と現実のギャップに戸惑うことになる。
そのため人事部ではこの三年ほど学生向けの説明会を強化しているのだという。
二〇〇八年の説明会は北海道から沖縄まで全国一三〇ヶ所を回り、参加学生は四万人を超えました。
学生さんからすると、S社のイメージは非常に華やかかもしれない。
そのイメージで応募してくる人もいるでしょう。
けれど、本気で応募いただくのなら、こちらも当社の実像を正しく理解していただきたい。
それがこの全国説明会の狙いです。
実際、説明会の場では、営業ってどんな仕事ですか、という質問も少なくありません。
営業の仕事はおもに二つ。
シーズンごとの中心商品や推奨商品を用いてお店の売り場づくりやプロモーション企画をお店に提案することと、お店でお客さまに接する美容部員を束ねて、マネジメントしていくこと。
こういうファンダメンタルな部分を理解してもらえば、よりS社のことがわかると思うのです。
当社の原点は化粧品販売であり、社員になればまずはお得意先さまとの間で営業の基本を知ってもらわないといけない。
だから、最初はさまざまな拠点を回ってもらう。
そうして現場を回ったあとで、本社機能的な部署に配属されていく。
こうした人事ローテーショS社ンを事前に説明しておかないと、現状にがっかりしてしまう社員も出てくる。
「もう会社辞めたいよ……」じつは、私自身、会社に入ってしばらくは辞めようかと思った時期もありました。
イメージと現実のギャップがすごく大きかったからです。
いまの学生と変わりません。
私か最初に配属されたのは九州の営業拠点の、商品課という部署でした。
当時は営業拠点が商品の物流も管理していた。
作業場は地下にあって、毎日やってくるトラックから積み荷を降ろし、今度は小売店向けに各種商品を積み替えて出荷をする。
毎日作業服で、その格好のまま寮から通っていた。
非常に地味な仕事で、S社のイメージからはほど遠い。
「もう会社辞めたいよ……」と何度思ったことか。
仕事がおもしろいと思い出しだのは、営業に就いてからです。
福岡の販売会社で販売施策担当となった。
当時の業務課という部署。
ここで販売会社全体のシーズンプロモーションを企画したり、営業担当者がお店に提案をするためのプロトタイプをつくったりしました。
CMで言えば、「ナツコの夏」(一九七九年)の頃。
福岡・天神のあたりで、本社の宣伝制作部や広告会社と一緒になってプロモーションをしかける。
テレビでやっていることと、自分が手がけているキャンペーンが同じだと。
そんなところからやりがいが出てきたのです。
内定者には「エレベーター体験」S社にかぎったことではありませんが、社会人になるということは、マナーや道徳心、そして感謝の気持ちをもつことだと思うんです。
その意味で言えば、いま内定者には、会社に入るまでの間に「エレベーター体験」ということをしてもらっています。
いろいろなところでエレベーターに乗る機会はあると思いますが、そこで同乗者の降階数を聞いて、必ず率先してボタンを押す。
残念ながら最近はとても少なくなりましたが、そうすることで、周囲から挨拶されたり感謝されることがある。
それがコミュニケーションの第一歩となり、新たな「人とのつながり」が生まれる。
実際、ある学生はそのエレベーター体験をしたことで、大学の先生と新たな交流が生まれたと話していました。
それがコミュニケーションの本質。
コミュニケーションは挨拶から始まり、挨拶に終わると思います。
こうした体験を少しでも重ねていくことで、自分も変わり、周囲も変わる。
広く言えばS社日本文化全体の話にもなるけれど、まずは自分の身近なところから変化を始める。
S社に入社して最初から大きな仕事ができるとはこちらも思っていません。
それよりも若さと明るさでそれぞれの事業所のムードを盛り上げるほうが、よほど大事です。
会社であろうが、一般社会であろうが、そうしたマナーや美意識をしっかり培う。
それがS社人、社会人としての第一歩だと思います。
東京海上日動火災保険エントリーシートではわからない当社の面接は常に学生さん一名の個人面接。
毎年、合計で数千人の学生さんとお会いしています。
一人二〇犬二〇分の時間を割いているので、一人の面接者が一日に一〇人程度しか面接できないのが現状です。
したがって、面接者として登板する社員(管理職)も膨大な数になります。
でも、とにかく実際に会っていくというのが、昔からの東京海上日動の姿勢なのです。
せっかくご応募いただいているのだから、面接者が登板可能なかぎりお会いしたいと考えています。
全国型採用(総合職)においては一万人近い学生さんから応募をいただきますが、極力エントリーシートだけで判断することを避けるようにしています。
それだけでは、学生さんの真の姿はほとんどわからない。
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